Django(別名:Rabo5)
ジャンゴラインハルトに由来するカクテルを作りたい。
ジャンゴの哲学を内包しているメランコリックなカクテルを作るとしたら、ベースとなるお酒は何がベストなのか考えると、
間違いなくジンではない。
もちろんウォッカでもない。
ホワイトラム?いや違う。
ダークラム?南国の湿度は違う気がする。
テキーラは? ロマの雰囲気はあるけれど、地理的に違いすぎる。
スコッチやシングルモルトでは紳士的すぎるし、長期熟成されたものならばロマンチックではあるけれど、メランコリックではない。
ではブランデー?
メランコリックかもしれないけれど、高貴すぎる。
粕取りブランデーのマールは?
一度経験したら忘れられない風味はどこか懐かしくて、掠れた感じもあってメランコリック。
ヨーロッパジプシーのテリトリーであるイタリアから、南フランスに一致するし、ワインの残り粕から作る焼酎的なブランデーであるマールは、ロマの雰囲気にも合致する。
強烈に香る風味と、個性は、唯一無二のマヌーシュ・スイングに通ずるものがあるし、粗雑なのにエレガントで、メランコリック。
なので、ベースは「マール」、
圧倒的風味とまろやかさを持っていて、手に入れやすい、ルイラトゥール社のマール・ド・コルトングランシーを。
合わせる果物は何が良いのか。
レモンもライムも違う。
やってみるとわかるけれど、キュラソーを合わせてシェイクしても、奇妙なサイドカーになるだけで、オリジナリティーがない。
ブランデーにグレープフルーツは合わないし、気をてらった果物も違う感じがする。
普通にオレンジはどうか?
オレンジの原産地は北インドのアッサム地方で、ロマの元となる北インドのロマニ系と同じ地域なので理屈は合う。
マールとの相性は抜群で、ワインというかブドウ自体の個性を凝縮したマールの風味を、生の果実に戻す様な雰囲気があって、例えるならば液体のレーズンの様な感じになる。
懐かしい感じだし、メランコリックだ。
合わせる果物は、オレンジ。
様々な民族、土地、音楽性を考えると、グラスの中でビルドするのではなく、
ステアでもなく、強く「シェイク」したい。
マールとオレンジをいろいろな比率でシェイクしてみると、何か少し足りない。
足すとしたら、何か異質で、切れ味とか、汚しを入れるものが良い。
すでに個性的なミックスに、下手な個性を合わせるのはマズいし、甘みや風味はもういらない。
ビター? 皮のピール?
甘くなくて、ビターで、透明か暖色系のもの。
カンパリビターだ。
ロマと関係の深いイタリアのリキュールでイタリア語で「苦い」は「アマーロ」。
どこかロマに似ている。
原料もビターオレンジで、相性は良い。
1tsp加えてシェイクスしてみると、何よりエッヂが立って、より切れ味がよくなる。
なので、スパイスとして、カンパリを1tsp。